ソフトバンク株投資から見る、株を買う前に大切なこと

先日、ソフトバンク(SB)が上場しました。
直前の通信不具合などの影響もあり、初値から公開価格を割り込み、上場初日は1割強も安い値段で終わりました。これが、個別株投資もそうですが、特にIPO投資の難しいところです。

有名だからとか、会社の規模が大きいなどと、株価の上昇には相関関係(比例関係のようなもの)はありません。その会社が将来、成長し続けると思えたら株価は上がっていきます。

今回のSB株のIPO投資をした個人投資家の2パターンを紹介します。

早くプラスを求める投資家と、長期で成長性をしっかり見つめる投資家

1.マイナスに嘆く、早くプラスにして売りたい

冬のボーナスでSB株を購入したある人は、初値から公開価格を割り込んだ今回のIPO結果を受けて、「いきなり損なんて・・・」と憂鬱な気持ちでいっぱいです。値上がりする、ただそれだけを信じて買ったのに。でも、損を確定させるのは嫌だからしばらく保有して、公開価格を上回って少しでも利益がでたら売却しよう。

こんな風に考えている人がいます。

それはNTT株を買った投資家の行動からも明らかです。
バブル絶頂期にNTT株を買い、その後30年近くずっと塩漬けでNTT株を保有している個人投資家がたくさんいました。去年ようやく第一次売り出し価格を上回るまでに株価が上昇し、そのタイミング(つまり、運用利益が出たタイミング)でNTT株を売却した投資家がたくさん出ました。


(引用:日経新聞 2017年2月9日)

2.配当性と成長性を重視して保有を続ける

一方でこんな投資家もいます。

初値から公開価格を下回ったのは残念だけど、高い配当利回りと成長性は魅力的だと感じているので、保有を続けたい。
これは同じSB株に対する感想です。

情報分析を行い、自分の投資ルールを作り、そのルールを満たした株を運用する、と決めているこの投資家は目先の株価の上下に動じることはありません。一瞬一瞬の動きではなく、長期でその企業の成長性を見越して投資をしています。

どの株を買うか、より大切なこと

同じ株を保有していても、このように2つのパターンに投資家を分けることができます。
どちらのパターンが投資をして、資産を増やすことができると思いますか?

そうです、後者の方です。

後者のポイントは、自分だけの投資ルールを作り、それに基づいて投資をしていることです。
今回ご紹介したのは、配当利回りや成長性が自分の投資基準を満たしている、ということでした。また、割安性が魅力的だから運用するという人もいるでしょう。

成長性を重視している人は、成長甚だしいFANG(Facebook, Amazon, Netflix, Google)などの企業や、このようなIT関連の投資信託に投資するかもしれません。
しかし、割安性を重視している人は、GAFAなどの企業は割安ではないので、このような企業や金融商品に投資することはありません。
*割安性や成長性は、それぞれを、図る指標があるので客観的に判断することができます。

「どの株が良いですか。」や、「お勧めの金融商品を教えてください。」と言われることがありますが、このようにどんな投資のルールを持っていて、どんなスタイルで投資をしている(これからしていきたい)人なのかが分からなければ、オススメするのが非常に難しいです。
逆に、自分のルールが明確な人は、自分にぴったりのアドバイスをしてもらえるので、どんどん投資で成果を出していくことができます。

どの株を買うのか、ということよりも、どういうスタイル・ルールで投資をするのかを決めるのが、うんと大切なのです。

お金の管理を専門家に託すとどうなるか

私たちは、人と人が支え合いながら生活をしている、とは昔からよく聞く言葉です。
この支え合いは、社会生活を送る上でその効果を発するに留まらず、知識を身に付ける上でも効果を発揮しています。ようは、誰かが助けてくれるので、全ての分野で詳細まで理解できなくても良いということです。

例えば、体調が悪くなると、医療の知識を身につけている医者を頼れば良いし、スリムな身体になりたいと思うと、ダイエットの知識に長けたトレーナーを頼れば良いですよね。

私たちの生活では、何か詳細な情報が必要になることがあれば、その各分野に頼れる専門のアドバイザーがいます。このアドバイザーたちのおかげで、私たちは多くの知識を持ち合わせていなくても、快適な社会生活を送ることができています。

と同時に、ことお金に関しては、この関係がマイナスに働いてしまう場合があります。

使うと増え、使わないと減る金融リテラシー

家計の管理を夫か妻などどちらか片方に任されている場合、任されていないもう片方は金融に関する情報を可能な限り無視しながら生きていくようになります。これは、自分にとって『金融』に関する知識、情報が重要でないと脳が判断するため、無意識のうちのうちに、金融に関する情報を無視していくからです。

テキサス大学で行われた調査で、興味深い結果があります。
交際しているカップルに、お金の管理をどちらがどれだけ分担しているのか、そして一般的な金融知識をどれだけ身に付けているのかを調べました。交際期間が長くなるにつれ、お金の管理をしている方は金融リテラシーが高くなる傾向がありました。これは容易に想像できることでしょうが、注目すべきは、もう片方のお金の管理をしなかった人は、次第に金融知識が低下していったのです。

この結果より、金融リテラシーには「使わなければ失われる」という性質があるらしいことが分かりました。
(参照:「知ってるつもりー無知の科学」)

小さく小さく投資を始める、その効果とは

金融リテラシーの「使わなければ失われる」という性質を前提に考えると、投資できちんと資産を築くためには、リタラシーを正しく使って投資をする必要があります。

それは、例えばNISA口座とはどういうものなのか、iDeCoとはどういう制度なのかといったものでも良いです。一つ、小さなステップを踏み出すことで、どんな商品を運用するのが良いのか、どれくらいリターンを出そうか、とどんどん考えが深まっていくでしょう。

何も分からないまま、ただ言われるままに投資をするのは、お金の管理をする、というのは異なります。なので、きちんと金融リテラシーを身に付け、投資でお金を増やしていくためには、あなたが興味を持てるところから、小さく小さく投資を始めていくことが大切です。

最初から大きなリターンを求める必要はありません。むしろ、高いリターンを求めなくても高いリターンを出せるのが成功する投資の秘訣です。

そのためにも、まず、お金に関心をもつ、お金の管理をすることから始めてみてください。

iDeCo(イデコ)で資産を増やすために欠かせない税金ポイント

資産の半分近くを現金・預金が占める日本と、株式と投資信託で約半分を占めるアメリカとがお金の使い方の対比でよく出てきます。

貯蓄から投資へ、という国の旗振りやロボアド(ロボットアドバイザー)などのフィンテックの活用で日本でも投資家が徐々には増えいて
とても良いことだと思います。

アメリカで株式や投資信託の保有率がこれほどまで高くなった背景には、確定拠出年金制度の存在があります。つまり、積極的に株式などを運用している人の数は少なく、多くの人が将来の老後資金を蓄えるために、この制度を通して株式や投資信託を運用しているのです。

日本でも個人型確定拠出年金であるiDeCo(イデコ)の加入者が今年の8月末に100万人を突破しました!イデコをきっかけに投資を始める人が増えるのは、喜ばしいことです。

イデコを使って、貯金をし続ける人たち

では、運用している中身をみてみましょう。
イデコや企業型確定拠出年金も同じですが、運用する商品を大きく2つに分けることができます。
1.元本確保型
2.元本変動型

元本確保型というは、文字通り元本が確保されているタイプのもので、いわゆる定期預金がこれにあたります。定期預金なので、残念ながら、このタイプを選択している人は投資をしていることにはなりません。ただ、貯金をしているだけです。

一方、元本変動型というのは、元本保証がないということを意味し、投資信託を運用することになります。元本が減るかもしれない、リスクがある、と恐怖を覚える人がいますが、投資とはリスクがあるからリターンを得られるものです。リスクについて語ると長くなるので、今回は説明を割愛しますがリスクは数値化して管理できるものなので、過剰に怖がる必要もありません。

さて、このようにイデコでの運用商品の種類を大きく2つに分けることができるのですが、加入者のうち35%が投資信託を選択し、65%と半数以上が定期預金を選択しています。

イデコのメリットと言えば、節税!

イデコを始め、確定拠出年金制度には3つのメリットがあります。いわゆる、節税効果です。それは
1.所得税控除
2.運用益は非課税
3.受取り時の所得控除

1.所得税控除

確定拠出年金に毎月積立ているお金(掛け金)は、その全額が所得税控除の対象となります。例えば、毎月1万円ずつ積立て、所得税の税率が30%だとすると、年間3万6千円の所得税が減ります。

2.運用益は非課税

一般口座で運用して運用利益が出たら、利益に対して20.315%の税金がかかります。ですが、イデコでは運用利益に対して、一切税金がかからず、運用利益は非課税です。この非課税はNISA口座を使用した時と同様のメリットです。

3.受取り時の所得控除

積み立てて運用した資金の受け取り方が、一回で全額を「一時金」としてもらう方法と、小分けにし「年金」としてもらう方法の2通りがあります。一時金の場合は退職金と同じ扱いになり「対象所得控除」の対象となります。年金として受け取る場合には「公的年金等控除」の対象となります。一時金、年金どちらにしても、それぞれ控除を得られ、支払う税金を少なく抑えることができるのです。

このように、3つもメリットがあるのですが、運用の仕方によっては、3つ目のメリットが上手く働かないケースがあります。そのような残念なケースを避けるためには、元本確保型を利用するのは、ぜひ避けていただきたいです。

節税ではなく、税金の支払い時期を先送りにしている制度

まずは、この試算表をご覧ください。

公的年金額 雑所得額① イデコ年金額② 雑所得合計③ 雑所得増加額 (③-①) 雑所得増加額に対する税負担額
なし 0円 405,162円 0円 0円 0円
120万円(月額10万円) 500,000円 405,162円 828,871円 328,871円 -49,330円~180,879円
180万円(月額15万円) 975,000円 405,162円 1,278,871円 303,371円 -45,580円~167,129円

①雑所得は、公的年金額から公的年金控除を差し引いた後の金額
②30歳~60歳まで、毎月2.3万円を積立て、年金として20年間、受け取る場合の金額
③公的年金とイデコ年金の合計額から公的年金等控除を差し引いた後の金額
*信託報酬や復興特別所得税は便宜上、含んでいません。

これは一例なのですが、イデコで積立てた資金を年金として受け取る時、収入(雑収入)が増えたとみなされるため、それに伴い税金も上がります。なので、この税金を上回る額の運用利益を出さなければ、受取りまでのトータルで考えると、税金が増えるというなんとも悲しい結果になってしまいます。

さきほど、イデコには3つのメリットがあり、その1で所得税の控除と述べましたが、実際は積立て時は税金を支払わず、受取り時に税金を支払うという、税金を先送りにしているにすぎないのです。

なので、この制度を正しく活用するためには、定期預金をするのではなく、きちんと運用をしてリターンをもらって資産を増やしていかなければならないのです。そうすることで、本当のトータルプラスで幸せな老後資金を築くことができるのです。

上記の資産は、あくまでも一例です。一人一人、条件が違い過ぎるので、自分のケースはどうなのか?と気になる方は個別に相談いただければと思います。

小さい値動きを狙う投資の方が、高いリターンを出せる

投資をするなら少しでもたくさんリターンをもらいたい、と思ったことはありますか?
もしくは、少しでも高いリターンを狙って、いま、投資をしていますか?
高いリターンを狙うというのは、変動幅が大きな商品(ボラティリティーが高い商品)
を狙って運用しているということを意味します。

せっかく投資をするなら、
しっかりと利益を増やしたい!と思いますよね。
もちろん、私も思います!!

では、ボラティリティーが高い商品に投資をすると
少しでも高いリターンを得らえるのかというと
なにやらそうでもないようです。

大きな上昇を狙わなくても高いリターンが出せる?!

先週の日経新聞で、低ボラティリティー戦略というものが紹介されていました。
(詳細はこちら

どんな投資方法なのかというと、
あえて価格変動が低い(急激な上昇をしていない)銘柄を選んで運用する手法です。

一見すると、高ボラティリティー銘柄よりリターンは低くなりそうですが、
2008年のリーマンショック以降、好成績を上げる例が出ていて
注目されている投資手法だそうです。

成功する投資の原則に
高いリターンを求めなくても、高いリターンは出せる
というのがあります。
この低ボラティリティー戦略も、まさにこの原則に則った結果です。

急上昇は、半分の確率で急下降するのを意味する

ボラティリティーが高いということは、急上昇を遂げているその同じ角度で
急下落をする可能性が50%もあるということを意味します。
投資は下落幅をどれだけ小さくするのかが大切なので、
この急下落の影響が高いリターンを求めて投資をしている
高ボラティリティー投資家に大打撃を与えるわけです。

一方、低ボラティリティーだと、上昇幅は小さいかもしれないですが
下落幅も小さいので、マイナスの影響が非常に小さいです。
そのおかげで、高いリターンを求めていないのに、
結果的に高いリターンを出している投資になるのです。

ギッコンバッタンと急上昇、急下降を繰り返さなくても高いリターンを出せるなんて
投資の世界は面白い、と思いませんか。
この戦略に興味を持った方、本当にお金を増やしたいと思った方は
一度取り入れてみてはいかがでしょうか。

あなたはどっち?日雇い労働者思考、それとも経営者思考

どれだけ長期的な視点で物事を考えられるかで、得られる収入が変わる。
こんな話を聞いたことありますか?

1日単位で考えている人は、日雇い労働者思考。
1ヶ月単位で考えている人は、ヒラの会社員思考。
3ヶ月毎や、1年単位で考えている人は、部長クラスの会社員思考。
3年以上先のことまで考えている人は、経営者思考。

短期思考と長期思考がもたらす違い

長期的な展望を持っているかどうかは、人生の成功を大きく左右します。日々、「今日一日だけ」を考えている人と、5年後10年後を考えている人とでは忍耐力が変わってくるからです。

10年先のことまで考えていると、物事の良し悪しを短期で評価しないため”今日”を頑張ることができます。一方、今日のことだけを考えていると、今日の成果に焦点が当たるため短期の誘惑にすぐに負けてしまいます。それが1ヶ月、1年、10年と続くと、備わる忍耐力に大きな差が生まれ、それによってもたらされる結果にも大きな違いを生みます。

特に資産形成においては、短期の誘惑にかられると、少し利益が出たところですぐに利益確定をしてしまいます。それでは、残念ながら複利の効果を享受することができません。これは資産形成をする上では非常に残念な結果です。

一方、長期思考で資産形成をすると、10年後や15年後などの将来のために投資し続けるというビジョンがあるため、少しの利益が出たところで利益確定をすることはありません。自分のビジョンに沿って運用し続けるため、複利の効果も存分に活用でき加速度的に資産を増やすことができます。

長期思考でこれからのキャリアを考える

長期思考に立つと成果を出せるのは資産形成だけではありません。キャリア形成においても、同じです。特に、今の30代やそれより若い世代の人は確実に人生100年時代を生きるため、働き方の考えを一新する必要があります。

「この会社が良い」「せっかく良い会社に入ったんだから頑張りなさい」という、親からのアドバイスはありがたく頂くだけで、右から左に聞き流しましょう。最新の情報、時代の流れをつかんでいるのは親ではなく、「現役の私たち」の方です。あなた自身の感覚をより重視してください。

充実したを仕事、キャリアを送るとために必要なこと

人生100年時代をどう生きるのかは、世界的にヒットした著書『ライフ・シフト』に詳しく記載されています。今回は『ライフ・シフト』の著者、リンダ・グラットン氏が書かれた『ワーク・シフト』から、長期思考に立ち、これから幸せに働き続けるために必要な3つの能力をご紹介します。

1.職業人生を通じて、自分が興味を抱ける分野で高度な専門知識と技能を習得し続ける能力
2.友人関係や人脈などの形で人間関係資本を育む能力
特にや強い信頼と深い友情で結ばれた少数の友人との関係を大切さにしながら、自分とは違うタイプの大勢の人たちと繋がり合うことが大切です。
3.所得と消費を中核とする働き方を卒業し、創造的に何かを生み出し、質の高い経験を大切にする働き方に転換する能力

何かしら1つの能力を磨き上げるのは立派なことです。と同時に、それが1つの企業の中でしか通用しない能力なら、どうでしょうか?残念ながら、自分の市場価値を下げることはありませんが、市場価値が上げることにもなりません。

今、目の前の仕事をやり遂げるだけの視点から少し視線を伸ばし遠くの自分が送りたい人生を想像し、より多くの場面で活用できる高度な専門技術を磨いていきましょう。

まとめ

人生100年時代とは聞くものの、毎日の生活に精一杯の方もいるでしょう。新しい時代に向けて既に動き始めている人もいるでしょう。動き出している人はどうぞ、その活動を継続されてください。まだ動きだせていない、これから動き出す人は、まず長期的な視点に立つことから始めて見てください。

長期的な視点に立ち、自分が進みたい道を決めることで、日々の些細な結果に心が揺れ動かなくなります。それが仕事において成果をだすのはもちろんのこと、資産形成においては本当に大きな効果を表します。

ぜひみなさんも経営者思考を身につけて、これからの長い人生、幸せに過ごしていきましょう。