資産の半分近くを現金・預金が占める日本と、株式と投資信託で約半分を占めるアメリカとがお金の使い方の対比でよく出てきます。
貯蓄から投資へ、という国の旗振りやロボアド(ロボットアドバイザー)などのフィンテックの活用で日本でも投資家が徐々には増えいて
とても良いことだと思います。
アメリカで株式や投資信託の保有率がこれほどまで高くなった背景には、確定拠出年金制度の存在があります。つまり、積極的に株式などを運用している人の数は少なく、多くの人が将来の老後資金を蓄えるために、この制度を通して株式や投資信託を運用しているのです。
日本でも個人型確定拠出年金であるiDeCo(イデコ)の加入者が今年の8月末に100万人を突破しました!イデコをきっかけに投資を始める人が増えるのは、喜ばしいことです。
もくじ
イデコを使って、貯金をし続ける人たち
では、運用している中身をみてみましょう。
イデコや企業型確定拠出年金も同じですが、運用する商品を大きく2つに分けることができます。
1.元本確保型
2.元本変動型
元本確保型というは、文字通り元本が確保されているタイプのもので、いわゆる定期預金がこれにあたります。定期預金なので、残念ながら、このタイプを選択している人は投資をしていることにはなりません。ただ、貯金をしているだけです。
一方、元本変動型というのは、元本保証がないということを意味し、投資信託を運用することになります。元本が減るかもしれない、リスクがある、と恐怖を覚える人がいますが、投資とはリスクがあるからリターンを得られるものです。リスクについて語ると長くなるので、今回は説明を割愛しますがリスクは数値化して管理できるものなので、過剰に怖がる必要もありません。
さて、このようにイデコでの運用商品の種類を大きく2つに分けることができるのですが、加入者のうち35%が投資信託を選択し、65%と半数以上が定期預金を選択しています。
イデコのメリットと言えば、節税!
イデコを始め、確定拠出年金制度には3つのメリットがあります。いわゆる、節税効果です。それは
1.所得税控除
2.運用益は非課税
3.受取り時の所得控除
1.所得税控除
確定拠出年金に毎月積立ているお金(掛け金)は、その全額が所得税控除の対象となります。例えば、毎月1万円ずつ積立て、所得税の税率が30%だとすると、年間3万6千円の所得税が減ります。
2.運用益は非課税
一般口座で運用して運用利益が出たら、利益に対して20.315%の税金がかかります。ですが、イデコでは運用利益に対して、一切税金がかからず、運用利益は非課税です。この非課税はNISA口座を使用した時と同様のメリットです。
3.受取り時の所得控除
積み立てて運用した資金の受け取り方が、一回で全額を「一時金」としてもらう方法と、小分けにし「年金」としてもらう方法の2通りがあります。一時金の場合は退職金と同じ扱いになり「対象所得控除」の対象となります。年金として受け取る場合には「公的年金等控除」の対象となります。一時金、年金どちらにしても、それぞれ控除を得られ、支払う税金を少なく抑えることができるのです。
このように、3つもメリットがあるのですが、運用の仕方によっては、3つ目のメリットが上手く働かないケースがあります。そのような残念なケースを避けるためには、元本確保型を利用するのは、ぜひ避けていただきたいです。
節税ではなく、税金の支払い時期を先送りにしている制度
まずは、この試算表をご覧ください。
公的年金額 | 雑所得額① | イデコ年金額② | 雑所得合計③ | 雑所得増加額 (③-①) | 雑所得増加額に対する税負担額 |
なし | 0円 | 405,162円 | 0円 | 0円 | 0円 |
120万円(月額10万円) | 500,000円 | 405,162円 | 828,871円 | 328,871円 | -49,330円~180,879円 |
180万円(月額15万円) | 975,000円 | 405,162円 | 1,278,871円 | 303,371円 | -45,580円~167,129円 |
①雑所得は、公的年金額から公的年金控除を差し引いた後の金額
②30歳~60歳まで、毎月2.3万円を積立て、年金として20年間、受け取る場合の金額
③公的年金とイデコ年金の合計額から公的年金等控除を差し引いた後の金額
*信託報酬や復興特別所得税は便宜上、含んでいません。
これは一例なのですが、イデコで積立てた資金を年金として受け取る時、収入(雑収入)が増えたとみなされるため、それに伴い税金も上がります。なので、この税金を上回る額の運用利益を出さなければ、受取りまでのトータルで考えると、税金が増えるというなんとも悲しい結果になってしまいます。
さきほど、イデコには3つのメリットがあり、その1で所得税の控除と述べましたが、実際は積立て時は税金を支払わず、受取り時に税金を支払うという、税金を先送りにしているにすぎないのです。
なので、この制度を正しく活用するためには、定期預金をするのではなく、きちんと運用をしてリターンをもらって資産を増やしていかなければならないのです。そうすることで、本当のトータルプラスで幸せな老後資金を築くことができるのです。
上記の資産は、あくまでも一例です。一人一人、条件が違い過ぎるので、自分のケースはどうなのか?と気になる方は個別に相談いただければと思います。