Facebookは中年が利用するもの、若者はインスタグラムやtwitterなど、日本におけるSNSのイチ媒体としてはFacebookは人気を落としています。そんな中、今年6月に世界震撼させるニュースが発表されました。
それが、仮想通貨リブラ(Libra)の発表です。新たな仮想通貨の誕生は目新しいものではありませんが、このリブラはこれまでの仮想通貨とは一味も二味も異なり、世界の基軸通貨ドルと取り替わる可能性を秘めた非常に重要な存在なのです。
そんなリブラについて概要をお届けします。
もくじ
リブラとは
世界中に24億人の利用者を抱えるFacebookは、2019年6月18日(現地時間)に仮想通貨リブラを発表し、そのニュースは一瞬で世界中を駆け巡りました。開始時期は2020年ともう目前に迫っています。
リブラはブロックチェーン技術を基盤技術に用いた仮想通貨で、ドルや円といった既存の法定通貨と一定比率で交換できる価格変動のない「ステーブルコイン」です。
従来の仮想通貨は、昨日1000円のものが、今日には1万円になるといった価格変動の幅が大きく、決済手段としての役割は乏しい。よって、法定通貨に置き換わることは難しいと言われてきました。
それがステーブルコインだと価格の安定が見込めるため、決済などでも利用しやすいと特徴を備えています。
リブラは信用できる通貨になれるのか?
Facebookは自社のみでリブラをコントロールしようとは考えておらず、リブラコンソーシアムという組織を作り、このコンソーシアムによるコントロールを目指している。
この組織には、既にVisa(ビザ)やMastercard(マスターカード)などのクレジットカードブランド大手企業、PaypalやeBayといった金融決済会社、Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)といったタクシー・ハイヤー配車サービス、音楽配信サービスを手がけるスウェーデンのSpotify(スポティファイ)など30社程が参画しています。
さらに、サービスを開始する2020年までに100社まで拡大すると言われています。
個人情報の漏洩など、データセキュリー上の問題を抱えているFacebookですが、上記のような世界的大手決済会社とコンソーシアムを組むのであれば、情報管理の安全性はもちろんのこと、決済手段としての信頼性、安全性も確保されていると言えるのではないでしょうか。
リブラ発行の目的
日本では銀行口座を持ち、自分の口座からお金を下ろしたり送金することは特別なことではありません。ですが、世界には17億人もの人々が未だに銀行口座を持っていません。中には持ちたくても持てない人もたくさんいます。
それが、リブラを介すと、銀行口座を持っていなくてもスマホ1つで通貨を保管でき、世界中のいたるところに送金できます。
現在の銀行を介した海外送金だと平均7%もの送金手数料が発生し、送金完了まで数日間かかることも珍しくありません。日本にいると海外送金する機会がほとんどないため、あまりこの影響を受けることはありませんが、アフリカ諸国や東南アジアなど、海外に出稼ぎに出ている労働者にとって、この負荷は大きいです。
また、リブラを使うと、ほぼゼロともいえる安価な手数料で送金でき、かつ数分のうちに送金が完了するため非常に利便性が高いと言えます。
リブラの発行目的は銀行口座を持たない人も含めた世界中の人が、手軽に短時間で送金し合えるシステムを提供すること、と言えます。
もう一つ、非常に重要な目的があります。それが国や銀行に依存しない巨大な企業連合体で通貨を支配することです。この目的はあるがために、アメリカ政府や中央銀行はリブラの発行に反対しています。
通貨覇権をめぐる争いにより警戒されるリブラ
米トランプ大統領はリブラに対して「信頼性に欠ける」と批判するなど、反対論が根強いです。7月16、17日に開催された米下院の公聴会においても、リブラの開発中止の声があがりました。これに対してFacebookはプロジェクトの継続を明言しています。
法定通貨との交換比率が保たれ、価格変動の幅も抑えられたステーブルコインであり、銀行口座を持っている人も持っていない人も全ての人がメリット享受できる制度で、一見すると良いことだらけのように思われますが、なぜ政府は反対しているのでしょうか。
それは、今回のリブラ発行ただ新たな仮想通貨を立ち上げたに留まらず、通貨覇権を握る可能性があるからです。
リブラを始めとするデジタル通貨は生まれながら世界中で安い手数料でスマホ一つで手軽に使用できます。そのため、国のコントロールを外れて使用されます。
元来、中央銀行が利下げや利上げで金利を調整したり、通貨の発行数を増減して流通量を調整することで、通貨の価値を調整していました。このような中央銀行による政策で調整できるのは法定通貨のみで、デジタル通貨は中央銀行のコントロールの範囲外の通貨です。
リブラをコントロールできるのはリブラコンソーシアムに限られ、つまり、世界中で使用される通貨をコントロールでき、その覇権を握ることができるのです。これは経済活動の基盤コントロールが政府や銀行から企業に移行するとも言えます。
中央銀行の存在目的として「物価の安定」があります。インフレが過剰になると利上げをして物価上昇を抑え、デフレにより物価下落が進むと値下げによって消費活動を後ろ押しし、物価下落の進行を食い止める活動を行ってきました。
この根底には世界経済はゆるやかなインフレを維持するのが、もっとも適しているという考えがあります。
それが、通貨覇権が中央銀行から企業に移行されると、中央銀行が利下げを行おうが利上げを行おうが、リブラを使用する上では影響を与えられなくなり、経済活動をコントロールできなります。
そして、経済のコントロールの主がFacebookを始めとするリブラコンソーシアムに移行する。このような背景もあり、政府はリブラを反対しているのです。
まとめ
Facebookは情報プラットフォームに留まらず、経済をコントロールするところまで発展しています。
一消費者としてはリブラから受ける恩恵の方が大きいようにも感じますが、経済活動を国がコントロールできなくなるというのは、少し怖い気もします。
一方で、Facebookのリブラに留まらず、中国政府もデジタル人民元の準備を進めていたり、日本でもみずほ銀行がJコインの発行を進めています。
このように基軸通貨が法定通貨からデジタル通貨へ移行すること、さらに世界の基軸通貨が大航海時代の銀から、19世紀に金に移り、第2次世界大戦を経てドルに移ったように、次の通貨に移るタイミングが来ただけの、避けられない出来事なのかもしれません。
今後のリブラの情報に注目です。